50代 ゼロからの農業

土地購入から開拓、耕運機入手、作業小屋製作

MRという職業について考える

もう5年以上前から、将来MRという職業に製薬企業が割けるヒューマンリソースが半減するだろうといわれてきた。

先日、ディオバン事件の最高裁判決が出たばかりだが、こうした公平性に欠くデータの創造と広告活動、そもそも直販でもなく価格に関与できない製薬メーカーによるユーザーへの宣伝活動(まるで家電量販店にいるメーカーの人員派遣さながらだが)、古くはキャッシュバックや症例報告による金銭提供など、名前は変化しているもののMRという職業に対する世間の目は厳しいものがある。

 

2018年の4月に改定・施行されたGPSP省令では、使用成績調査の区分が整理されたとともに、新しくデータベース調査が追加された。9月現在、行政の推進するMID -NETの利用はこの調査に関してまだ一桁レベルだが、このほかに民間のデータベースもあり、今後利用が進んで行くと思われる。しかしながら現状網羅されている規模から転医などの理由で、イベント調査や正確な副作用の頻度は、相対的な評価はともかく正確性には今ひとつと個人的には思う。

 

 

また、こういった情報提供活動において、外資系企業を中心としてMSL(メディカルサイエンスリエゾン)、販売目的とは異なる情報提供活動のみを行う部隊を組織している企業もあるが、実のところ業界におけるこの組織の位置付けも曖昧で、「各メーカー毎に活動が一律に定まっていない」(平成30年9月 医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(案)に関する意見収集の結果について 厚労省)とし、ガイドラインに対するパブリックコメントでMSLを規制対象から外すべきとするパブリックコメントを当局は一蹴し、情報提供活動ガイドラインの規制対象に加えておりMSLの立ち位置は微妙であると言わざるを得ない。

 

さて、過去にはシェアオブボイス(Share of Voice )の考え方が製薬メーカーでもてはやされ、多くのMRをいかに確保するかにその製品の売上げが委ねられた時代があった。この時代の流れを予見して早くから人員整理に取り組んだメーカーはあったが、ここにきて武田の大型リストラなど製薬メーカーに勤務するR&D、そしてMRを職業としていた人たちが一気に労働力市場にあふれてくる。商機とみて増大する安全性情報収集・伝達業務等でこういった労働力を吸収しようと努力するC-MRを抱えるCSOもあるが、多くは医薬以外の産業に流れることが予想される。

 

昔、病院や診療所に患者に混じって大きな鞄を持って壁に一列に並ぶ製薬メーカー社員も最近では全く見なくなった。薬は「大量の情報」を伴う点で一般的な商品と異なるが、必要な情報はオンデマンドで必要なときに引き出せるようになったこれからの時代にはいつか恐竜のようになくなってしまう職業なのかもしれない。

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